奥田文子

奥田文子
Ayako Okuda
奥田文子の清らかなペインティングには、地面と空などの境界線が描かれている。
地面と木、山と空、湖と山など多くのバリエーションがあり、それらは奥田がこれまでに訪れた国や日本の風景を撮影した写真が基になっている。
奥田のペインティングに登場しているスケールが正しくない小さ過ぎる、または大き過ぎる人達など旅先で出会った巧妙に描き出された人々は、モティーフの一つだ。
カンヴァスには、奥田が場所、人の大きさ、季節感までをも無視してシャッフルし、パズルのピースの様に組み合わせて描いているかのような違和感を持つ。
実際には、ほんの目の前にあるわずか数歩でたどり着けるはずの木なのに、敢えて小さ過ぎる人を描き、なかなか辿り着けない不確かな非現実感を描き出す。
逆に、山の上を歩く人は、いともたやすく山を超えてしまうだろう事が予測できる。
辿り着けそうで辿り着けない現実感、実は意外にも簡単に超えてしまえる現実感。
奥田のペインティングは、自分が存在している世界が確かなものかをユーモラスに私達に問いかけてくる。
綿キャンバスと油彩用の紙に、作品の過程で出来た絵具の垂れや層を生かしたマチエールは、風景に圧倒的な透明感を与えている。
不思議な、しかし申し分の無い美しい風景である。
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